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溶接デフロック・鋳鉄溶接うんちく語り

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繊細かつ野蛮な仕事です。車種はアルテッツァになります。

 

 

昔働いていたトヨタ岩手工場生産のクルマです。マークXなんかも岩手です。

割と高級目のクルマを生産していた工場らしいです。そう、その時代を私は知りません。
私が入社した時は既にトヨタの完全子会社となり、コンパクトカーしか回して貰えなくなってしまったようで、もう生産ラインナップがアクア、ベルタヤリス、ラクティス、CH-Rでした。
一台辺りの利益が低いので、ラインスピードも早回しになってしまい完全子会社化を境に形相が一変してしまったようです。
管理も厳しくなり、みんなギスギスしては「関東自動車時代はのんびりしてて良かった….」とこぼしていました。見ていて辛かったです。

 

まぁ前置き(?)はさておきやっていきます。
今回はお客様にデフをヤフオクで落札して頂き、配送先を当店にして直接送ってもらう形にしました。送料の節約になって良いですね。

 

 

デフのギアは鋳鉄製で、強度も必要ですので溶接法に関係なく鋳鉄用の溶接棒が必要になります。鋳鉄用というか、ほぼニッケルの棒です。

高いんですよこれが….4本(!)入りで2,000円以上します。重さは72gです。
ニッケルが高いせいもあるとは思いますが、正直足元見てると思う….知らんけど()

 

 

ちなみに普通の鉄用溶接棒(Z-44)は5kg入ってこれも2,000円程度です。
鋳鉄用ニッケル棒は70倍程度高いということです。

4本なんてマジで秒で消えます。今回もピッタリ使い切っています。

 

 

 

まぁそれだけ強度が必要な部分の鋳鉄の溶接は気を使わなければならないということです。
鉄と言っても様々ですが、炭素含有量が多いほど溶接性が悪くなります。
SS400は溶接性がいい、S45Cは溶接性が悪いとかいうのはそういうことです。

鋳鉄も炭素量が多いので溶接性が悪いです。
溶接しづらいという意味ではなく、冷めた後に割れたりするんですね。
その対策としてニッケル棒を使います。原理はややこしいのでググってください。

 

ちなみに鉄と銅の溶接にもニッケルを使うそうです。
これは単純な理由です。ニッケルは鋳鉄溶接に使用することからもわかるように鉄となじみがよく、かつ銅ともなじみが良いためです。

銅とニッケルの合金は白銅と言います。そう、100円玉の原料ですね。新500円硬貨の真ん中部分も白銅です。

まぁ、ですが相当難しいようです。銅は熱伝導が良すぎて全然溶けないようです。
熱伝導が良い材料ほど溶接は難しくなります。

TIGだとステンが一番溶接し心地が良く、鉄の方がやりづらいです。
これは熱伝導率が鉄の方が高い為です。(他にも炭素が悪さしたり、黒皮とか色々要因はあります)
アルミ溶接の難しさの一因も熱伝導率です。

ステンと鉄も溶接可能です。ステン溶接には普通はSUS308という棒を使うのですが、よりNi,Crの含有量が多い309という棒を使います。
ステンレスがステンレスたる理由であるCr等を溶接部に足してやるんですね。
よく電食が起こるなんて言われますが溶接部から電食は起こりません。タンクローリーなんかでステンと鉄を溶接しているのを見かけますね。

 

さらにピーリングと言うのですが、溶接後にビードをコンコン叩きます。
そして溶接前に予熱を入れて、溶接後も後熱を入れてゆっくり冷まします。
以上が溶接割れ対策になります。

 

 

ちなみに予熱は割れ対策以外でも結構有用です。
私も昔使っていましたが家庭用の100V溶接機、パワー無くて全然溶け込まないと思うんですがワークを予熱してやると結構上手く行きやすいです。

大型整備士時代もコボレーンモーター(ダンプに付いてる布あおりです。土砂がこぼれない様にするためなのでコボレーンなんだと思う….)のウッドラフキーが飛んでしまって、太さ20mmくらいのシャフトとめちゃくちゃ分厚いフランジを壊れて多分100A程度しか出ていない半自動溶接機で溶接しないといけなくなった事があったのですが、ガンガン予熱して溶接してうまくいきました….という経験が他にも数えられないほどあります。

トラックのパーツはいちいちデカいし、パーツ代が凄まじく高いので何とか溶接して直さなあかん事ばっかりだし、溶接機はボロくて買い換えてはもらえないのです….。

他にも厚さ違いの母材を溶接する場合なんかにも有用です。分厚い方を予熱しとけば均等に溶けます。

 

 

もう一つ鋳鉄というか、鋳物の溶接性が悪い理由として表面も中も穴ぼこだらけであるといいう事が挙げられます。
ダイキャストのアルミなんかをTIGで溶接する場合、TIGはかなり繊細なのでプールが爆発したりします….何回もタングステン削り直しで嫌になる仕事です。やりますが。

 

溶接って結構デリケートなんで完全に脱脂しないと上手くいきません。
油に浸っているデフのギアなんか最悪なわけですね。灯油で洗っても浸み込んだ油は到底取り切れません。ここも圧延材とは違うところです。

油を煙が出なくなるまで焼き切るのが一番で唯一の方法です。予熱にもなるので良いですね。以上が鋳鉄溶接で気を付けるべき主なポイントになります。

 

 

棒はヒートガンで出来るだけ乾燥させておきます。

溶接棒の箱には大概推奨電流が書いてあります。
僕はスラグ巻きづらくて深く溶けるという理由で例えばさっきのZ-44だと下向き100~150Aなんですがガン無視で190Aくらいでいつも溶かしてます。

今回の高級ニッケル棒は40~80Aだそうです。僕の感覚的には130Aくらい出したい….ところなんですが、こういう合金系の棒は電流上げすぎると棒焼けを起こしたりするので80Aで行きます。鋳鉄溶接の場合はあまり電流上げない方がいいという事情もあります。

 

 

 

という訳で溶かしました。棒でやった後にTIGで舐めました。
写真にはありませんがベアリングはアルミホイルで包んでスパッタがかからない様にしてあります。リングギアもやりやすいという理由と、スパッタ避けに外しています。

 

 

バックラッシュ測定。0.17mmで規定範囲内です。
シム式で楽でいいですね。

 

 

赤ボンド塗って溶接が剥がれないことを祈り、閉じて終了です。
ありがとうございました。

内容やオイルシールの交換有無等により異なりますが、概ね1万円台で作業可能です。お気軽にお問合せください。

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